侍JAPAN栗山英樹監督に見る令和のマネージャー像
2023年3月22日(水)(日本時間)野球日本代表侍JAPANが世界一を奪還しました。
本大会は、大会前から現役バリバリの日本人メジャーリーガー大谷、ダルビッシュ、そしてレッドソックス入りが内定している吉田正尚ら、世界の強豪と引けを取らない布陣をそろえた日本代表。
大会前からの評判通り、東京ドームでの東京ラウンドを順調に勝ち上がり、アメリカ・マイアミでも勢いそのままに優勝まで突き進みました。
宮崎市での合宿に始まり、大会期間中の2週間は、野球ファンの私にとっては、夢のような時間でした。
数か月前は、サッカー・FIFAワールドカップカタール大会で喚起に沸いた列島ですが、今回は野球です。
勝ち進むにつれ、前回、2009年大会の優勝を思い出したファンも多かったのではないでしょうか。
私もその一人です。(高校生だった当時は、全校集会の前でしたが、皆ガラケーを開き、ワンセグで中継にかじりついていたのを、昨日のことのように思い出します。)
優勝を成し遂げた要素
大会前の練習試合、また本大会期間中、多少の曲折はありつつも、以下、チームメンバーそれぞれが自らの役割を完璧と言っていいほどこなし、最高の結果を導きました。
- 若手投手陣が大いに躍動したこと
- 初の日系人メジャーリーガー、ラーズ・ヌートバーの攻守にわたる活躍、ムービーメーキング
- 村上、岡本ら、日本球界を代表するスラッガーがここぞの場面で活躍できたところ
- 大谷、ダルビッシュ、吉田ら、投打のキーマンが期待通りの活躍をしたところ(大会新記録の13打点を記録した吉田は、出色)
そして、このチームを導いたのは、名将、栗山英樹監督です。
栗山英樹監督・教育者栗山英樹
私が、相応のレベルの「野球脳」を持ちつつ野球を見始めて、15年程度が経過します。
栗山英樹という方は、野球解説者だと認識していました。
2008年頃、テレビ朝日の「報道ステーション」のスポーツコーナーに登場し、今と変わらぬ熱い語り口とオーバーリアクションが特徴的でした。
そして、もう一つ重要な特徴、それは、極めて理論的な観点から解説を行っていた、という点です。
栗山氏は、私が見ていた2000年代後半当時としては珍しい、選手・監督で豊富な実績が伴っていない解説者でした。
もちろん、ヤクルト時代、選手としてもプレイされておられましたが、決して華々しい活躍を遂げられたわけではありません。
野球界の並み居るビッグネームを押しのけて、民放キー局のスポーツコーナーを解説するのは、只者ではありません。(※私が物心をつく前、90年代後半から解説者としてご活躍だったことは、その後、ネット情報を検索して初めて知りました…)
東京学芸大学では、教員免許を取得し、プロテストを経て入団した、という異色の経歴から、いわゆる野球エリートらとは違う観点から、「野球」という競技、「プロ野球」という興行、そして、多種の才能を持つ選手の集団である野球チームという「組織」を、様々な観点から見ることができる方なのでしょう。
- プロ野球北海道日本ハムファイターズ監督、野球日本代表侍JAPAN監督
であると同時に、
- 教育者
でもありました。
監督としての素養
当然、代表監督である以上は、野球の理論は高度に身につけていなければなりません。
そして、誰よりも勉強家である栗山氏は、「野村ID」に代表される伝統的な野球理論、セイバーメトリクスやデータ野球(ボールの回転数、打球速度)等現代野球のトレンドをしっかりと研究しておられることでしょう。
この点では、極めて優れた野球の理論家です。
マネージャーとしての俯瞰性
ただ、組織を束ねて、意思を持った大人を同じ目標に向かせて、そして目標達成するためには、チームのマネジメントも極めて重要です。
名選手名監督にあらず、というのも、この点にあるのでしょうか。
選手に対して
一人ひとりの特徴をよく把握し、コミュニケーションをとることによって、身体の状態やメンタル面をよく見極めて、指導法、起用法を見極めます。
人当たりのいい人柄は、構成員それぞれが言いたい意見を表明する心理的安全性を担保します。
特に、今の若い「ゆとり世代」「Z世代」にとっては、このような伴走型のリーダーというのは、接しやすく、従って信頼も置きやすい存在なのではないでしょうか。
大会序盤は不振にあえいだ3冠王、村上選手を、打順こそ落としたものの最後まで起用し続け、準決勝メキシコ戦では最終回無死1,2塁からバントを指示せず打たせたことで、劇的勝利につなげました。
コーチに対して
監督が打撃、投球、守備、走塁すべてについて知識を高めて把握するのは無理があります。
それぞれの分野の専門家の意見を最大限に聞き、チーム状況を適時・適切に把握し、作戦決定につなげる。
今大会でも、投手起用の間違いがほとんどなかったこと、(チャンスで一本が出ない残塁は仕方ないですが)攻撃側の作戦ミスもほぼなかったことから、ごく短期間で完成度の高いチームを作り上げたことが見て取れます。
このような栗山氏の姿勢は、令和時代の新たなマネージャーとして、学ぶべきポイントが多いのではないでしょうか。
本大会を見ていて、そんなことを感じました。
…が、一番は、一野球ファンとして、大変大きな感動をもたらしてくれた侍JAPANの選手、監督コーチ陣、チームスタッフの皆様に、全力で感謝を伝えたいです!!!
2週間、夢のような時間を過ごさせてくれて、また、14年前、優勝で熱くなった記憶を蘇らせてくれて、ありがとうございました!!!
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